DCLS

(Dental Crisis Life Support/歯科救急危機対応)

「DCLS」とは「Dental Crisis Life Support」の頭文字を取った略語です。

 この概念は、歯科診療/治療領域における健康危機、誤嚥による窒息、アナフィラキシー、失神、心血管危機に遭遇した時の歯科チームとして最初の10分のにどのように対処すべきか、を学習・研修するもので、そのためのコースがDCLSコースです。

  • しかし、これだけ心肺蘇生に関するコースがあるので、それでいいのではないか?

 

 まず歯科領域の法律的な位置付けを明確にしましょう。

  医師の行う医療、つまり職務・資格は全て「医師法」に定められています。違反すると「医師法違反」となります。また医療機関に関する規程は「医療法」に定められています。

 歯科領域を担当する歯科医師は「歯科医師法」により職務・資格が定められています。この「歯科医師法」と「歯科衛生士法」「歯科技工士法」を合わせて歯科三法と総称します。また歯科衛生士、歯科技工士を、コ・デンタル(コ・メディカルの歯科版)とも呼びます。

 メディカル・サイエンスとしての心肺蘇生法の内容を学習することは、万人の学習の権利であり疑う余地もありません。しかし、一方で、研修、特に実地研修は各職種の法律により定められる(制約を受ける)のは致し方ありません。

 この「医師法」と「歯科医師法」の運用は、指導監督を行う厚生労働省や法曹界の判断(歯科医師の救急医療研修や麻酔研修に関する実例をネット検索等でご参照下さい)によると極めて厳密なものとなります。

 少なくとも、2010年1月4日現在では、歯科医師が医師の指導(マニュアルそのものも含む)下に救急医療研修が行われ、指導した側が「医師法違反」なった例があります。

 善意で広き心で行われている心肺蘇生講習においてもこの判断は明確ではありません。

 そこで、歯科医師およびコ・デンタルが、心肺蘇生講習に固有のテキストを持つことで、歯科医師自らによるコース開催が可能となるのではないか、との呼びかけに応じた日本救急医学会および日本口腔外科学会の有志により作成されたのが Dental Crisis Life Support:DCLSです。

  • 最初の Dental は判るとしても、どうして次の C が Cardiacでなくて Crisis なのか?

 

 素朴な当然の疑問ですね。

 実は名称作成にあたり、指導監督省庁に打診したところ「心臓は歯科医師法の診療の範囲外なので Cardiac はご遠慮願いたい」との回答をいただき、 Crisis にすることと、巻末に「歯科医師の救急医療研修ガイドライン」を掲載することで出版に漕ぎ着けました。

是非、上記の趣旨をお汲みいただきDCLSをご活用下さるよう、御願いいたします。



注:DCLSに関する事務作業は2009.10.01より日本臨床シミュレーション機構DCLS事業部委託しております。